生活を垣間見る
奇妙礼太郎（solo）に引き続いて、どすこいSTAGEは開始前から入場規制がかけられていた。ピーンと空気が張り詰めていて、ドキドキと鼓動が早まっていくのが分かる。たくさんの人が待っているにも関わらず深く静まったロビーに男女2人組が登場し、優しくギターの音色が響き始めた。ラッキーオールドサンのステージが始まったのだ。
彼らの歌は、日々の営みの歌である。しかしそれは私たちに寄り添ってくれる、というよりも、なぜだか“彼らの生活をそのまま歌にした”という印象を受ける。さらっとしていて透き通ったナナ（Vo）の歌、篠原良彰（Vo&Gt）のしっとりとしていて安心感のある声とギター。そして情景が手に取るように分かる歌詞。シンプルな構成で表現される彼らのステージを見ていると、なぜかふたりの生活を覗き見しているような、心の底を撫でられてるような……そんな気持ちになった。なるほど、だからきっとロビーには緊張感が漂っていたのだ。ふたりのプライベートをそのまま私たちに投げかけるようなステージを見て、そう納得することができた。
普段は四国を活動拠点にしている彼ら。しかし、昨日は栃木、一昨日は大阪と飛び回ってきたらしい。今日のボロフェスタを「長い旅の最後」と表現したふたりは「旅するギター」を披露してくれた。「つづきをみたい旅するギター ハローグッバイ今日を歌うだけ」と歌う彼らを見て、今日の私たちもいつか彼らの生活の一部として歌になればいいな、とか思う。
「歌うことは花を飾るように」（“ゴーキャン”の歌詞より）。歌うことは彼らにとって日々を豊かに暮らしていくことのひとつなのだろか。そんな彼らの日々から力を借りてみると、いつもの景色が少しだけ広がって見えたような気がした。あたたかい拍手の中、ラッキーオールドサンのステージは終わりを迎えるのだった。
