ゆ~すほすてる

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

京都のポップ&オルタナティブ・ミュージック

「やる気あります! よろしくお願いします!」とegw(Vo&Gt)が早速前のめりな姿勢でマイクに声を吹き込み、ごっつ(Cho&Key&Gt)は「イェーイ!」と激しめにジャンプする。京都のポップ・バンド「ゆ~すほすてる」のライヴが始まった。1音目が鳴った瞬間から、メンバーの笑顔と勢いが印象的だ。2021年リリースの『ゆるしたい/ゆるされました?』から「もう全部辞めてしまおう 僕らは解散」という歌詞から始まり、「解散」がスタート。混声ツインボーカルの声の重なりが絶妙に気持ちいい。そして、印象的なギター・リフから3曲目の「私たちってかわいそう?」が始まり、ごっつはキーボードを弾き、叫び、ゆったりめの曲からのギャップが感じられる。さらにスイッチが入ったかのように叫び、ゆ~すほすてるも、そして街の底のバイブスもアガっていく。ポップでキャッチーなメロディックの中に「そうでもないんだよ」「それでもいいんだよ」というどこか無常感を感じる歌詞がうまくハマっていて面白い。

egwは「ありがとうございます! 1番! やる気あります!」と再び気概を話し、すでに街の底STAGEでは両手を上げ盛り上がる人々が。「みんなが元気で嬉しい! 呼んでもらえるのこれが最後になるかもしれないんで、悔いがないようにやります!」と笑いながら話すegwだったが、魅力溢れる彼らの音楽は今後もボロフェスタで観たいしまだまだ知られていくべきバンドだ。続く「いかないで〜」ではかなり激しめなジャンプをしながらの演奏。ポップな曲調だがどこかネガティヴ歌詞であるところが面白いバンドだと感じた。是非とも歌詞をじっくり読みたい。ノザキショウタ(Dr)の安定感あるリズムの上に展開されていくふたりの掛け合いはずっと聴いていたいくらいにハマっていて、思わず笑顔になりながら観てしまう。

「俺なりのオルタナ魂を見せたい!」と普段のライブでは絶対言わないようなことをテンション上がって言ってしまうほど、メンバーもかなり楽しんでいる様子だ。「自分たちは今日の出演者の中でも1番アマチュアとか素人に近い存在だと思う。でも、何もない普通の人がめっちゃいい曲作ったら嬉しくないですか?」と話すと、詰めかけたお客さんからは温かい拍手が。そう自分が思ってたときのことを納得させられる曲ができた、と話し演奏されたのは「九月」だ。“さあはじめからやり直そう”と最後エンドレスで続け、この空間がずっと続いてほしいという幸せを感じる。極上のポップ&オルタナティヴ・ミュージックに拍手だ。ラストに近づき演奏された「どうでもいいんだ」では、ごっつはジャンプをし拳を突き上げてぶち上げる。最後、瞬時にマスクをつけたと思ったら、勢いのまま客席にダイヴ! しかし、うまく乗れなかったのかお客さんと一緒に肩を組みながら盛り上がっている。これぞライヴだ! と胸が熱くなっていると、全員ステージ上に倒れ込む形で最高潮のフィニッシュを迎えた。

一見、最近の若者風な雰囲気だったので、お洒落な感じのバンドなのかと思っていたのだが、なかなか噛みごたえがありそうな、実にキャッチーで骨太なバンドだった。また注目していたいバンドを発見できて単純に嬉しい。「ゆ~すほすてるというバンドは京都でずっとやっていて、ボロフェスタにはお客さんとして来ていたけれどまさか自分が出られるなんて思っていなかった」というMCにもあったが、こういった嬉しい場面に立ち会えるのも、ボロフェスタの醍醐味だろう。再来週の土曜日、11月19日にLive House nanoでイベントをやるそうだが、今後も京都を大事にしつつ、是非他の場所でも観たいと強く実感した。

Photo by ウチダミサキ
Text by キムラアカネ