クリトリック・リス

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

どすこい2022、これにて完結!

「俺とお前とどっちが強いかー! 酒相撲しようぜ! 」
超満員のどすこいSTAGE、時刻は19時30分。本日20時開始予定のボロフェスタには欠かせない中年のおっさん、クリトリック・リスが今年は出番の30分前から酒相撲開始だ。リハーサルの段階からすでにKBSホールのロビーには、おっさん世代を中心に老若男女、幅広い年代の人たちが集まっている。「まだリハーサルやで!?」と本人も再三繰り返すほどの盛り上がりよう。我が身体のチューニングだという大義名分の下、酒を片手に本番さながらの曲数を繰り出し、お客さんからは拍手と歓声と笑いが止まらない。今宵のどすこいステージはすでに団結感が半端ないことになっている。

「去年はKBSホールだったのに、またどすこいステージに逆戻り。ライヴ次第では来年は地下に戻りますからね」。今年は勝負どころだと話し、笑いを誘う。そして30分間の酒相撲が終了。しかし、リハーサルと本番の境界線はほぼないほど盛り上がっているので、意外にも本編はしれっと始まる。スギムはすでに赤ら顔だ。「お父ちゃんとの日々」で独特の世界観であることが初めて見る人にも伝わるだろう。「1989」の1989! で拳を突きあげるフロアに対して「まだまだやるでー!」とタオルを振り回し、「LOST SUMMER」では裏拍に合わせて手拍子が湧き上がる。筆者が特に感動したのは「ライス&ライス」だ。「焼き飯」と「ライス」という単語だけでなぜこんなに盛り上がるのかは正直よくわからない。しかし、この御年53才のおっさんが目の前のこれだけの人を熱くさせる不思議なパワーを持っているのは間違いない。

客減ってると笑いながらも、「選ばれたもんが俺を最後まで見届けたらいいよ! それぞれの場面に散らばっても何も文句は言えん! なぜならボロフェスタが最高だからだよ!」と話す。ボロフェスタと歴史を重ねてきたレジェンドの言葉と感謝はズシリと重い。最高潮の中「バンドマンの女」と「MIDNIGHT SUMMER」を続け、選りすぐりの猛者たちは「あい! あい!」と叫び、サビでシンガロング。お客さんが減ったことを微塵も感じさせない大盛り上がりぶりだ。これぞボロフェスタ! これぞクリトリック・リス! と思っていると、おっさんたちに捧げる歌として「おっさんライオット」を披露し、最後にもうひと山作ってくれた。

ここのステージは自分が1番活躍できるステージだと話し、まさにどすこいをかましたスギム。最後はトリらしく、「ステンドグラスありがとう!」と後ろのカーテンを開きにいくと会場は爆笑の渦。しかし不思議なことに、1時間強このおっさんのパフォーマンスを見届けた私たちの目にはホールのステンドグラスが映っている(気がする)。正直こんなにおっさんのライヴに感動させられるとは思っていなかった。ボロフェスタのレジェンドを来年はどこのステージで観れるだろうか。体力が続く限り、これからも酒を片手にイキイキと歌い叫ぶおっさんの歌を届けてほしい。

Photo by 瀬藤育
Text by キムラアカネ