FLUID

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

健全に“不健全”を楽しむ

外は清々しい青空が広がっていて天気に恵まれたボロフェスタ2022の1日目。
そんな地上とは正反対の空気の中、街の底ステージでは京都で結成されたオルタナティブ・ジャンク・バンドFLUIDが激しいステージ・パフォーマンスを繰り広げていた。

「健全な時間にありがとう!不健全な音で楽しんでください」とJxCx Tanaka(Vo&Gt)が客席へとにこやかに投げかけたかと思うと、開場は一瞬で夜のライブハウスへと早変わりする。白いシャツや青いワンピースに身を包んだ爽やかな見た目の彼らから生まれる強く重たい音たちは、ギャップを含めて私たちに大きな衝撃を与えてくれた。それぞれが複雑な音を鳴らし続けていると、それがいつのまにかひとつの音の塊になって前へ前へと波のように私たちへと押し寄せてくる。その波に乗って前のほうから少しずつ、お客さんたちも体を揺らしたり拳を掲げたりしてそれぞれに楽しんでいる様子が広がっていった。小さな街の底ステージがすぐに音と熱気でいっぱいに満たされて、フロアの熱も一気に最高潮へと達した。

JxCxがMCで〈フジロック〉で見たギャング・オブ・フォーの話を私たちに教えてくれた。「あの時の鋭く切り裂く演奏をしたい。そして、あの日の僕みたいになんか思ってくれる人がいたら……」とフロアを眺めながら語っていた。必死に、汗さえもかっこよく光らせて変拍子を操る彼らを見て、きっとその場に居た全員が感動したに違いない。強い思いが伝わった瞬間だった。

満員のフロアで鋭く切り裂くような演奏をしたFLUIDと、それを真剣に受け止めて盛り上がったお客さんたち。その両者があってこそ作り上げられたステージになったのではないだろうか。

Photo by shohnophoto
Text by 風希