宗藤竜太

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

昼下がりのグッド・ミュージック

太陽も傾きかけた時間帯のどすこいSTAGE。アコギ片手に登場したのは、東京を拠点に活動するシンガー・ソング・ライター、宗藤竜太だ。『くるみ』に収録されている楽曲と2020年にリリースしたセカンド・アルバム『magenta』の楽曲を中心に、うまく織り交ぜながらライヴを構成していく。「ティンク」で、弾むように日常を歌い上げるどこか安心感のある歌声は、ずっと聴いていたいと思わされる。「夜に驚く君に」では、「明るい話ばかりじゃないけど きっとそこには愛が」という歌詞にあるようなふたりのストーリーが自然と脳内に織り込まれていく。

鴨川沿いで個人的にリハしてきた、という京都ならではのMCを挟み、「公孫樹グランド」では宗藤の懐かしさを感じるような歌声と声量が相まって、各々の“あの頃”が思い出されるようだ。「ライムライト」では「おんがくのじかんがはじまるよ」と大きな愛で抱きしめ包んでくれるような音楽が奏でられる。

「最後の曲です。またきまーす、頑張りまーす」と述べ、ラストに披露した「いじわる」では、メリハリのあるカッティングと伸びやかな声が重なりあい耳心地がいい。天気のよいこの時間帯に、縁側に腰掛けひなたぼっこしながら聴きたいような感覚だ。演奏を終えると飄々と去っていったが、確かな温もりを聴く者に残してくれるアーティストにまた出会ってしまった、と思った。会場の空気を和らげた宗藤の音楽を、今後私は、ホッとしたいときに自然とかけてしまっているだろう。温かいグッド・ミュージックを発見できる幸せが、秋の京都、ボロフェスタにはあるのだ。

Photo by コマツトシオ
Text by キムラアカネ