あっという間に過ぎていく
紹介ジングルがスクリーンに映し出されると、大きな拍手で会場が包まれた。ドミコからバトンを受け取ってGREEN SIDE STAGEに登場したのは、ソロ・アーティストやギタリストとしても活動する田中ヤコブ（Vo&Gt）を筆頭に結成された4人組ロックバンド・家主。ジングルからの登場を「M‐1みたい」と言う田中のM-1グランプリトークからステージはスタートした。
1曲目は「Cheater」。優しく語りかけるようなテンポ感や歌声でホール内を埋め尽くしていく。ホール独特の音の反響が心地よく耳に入ってくるのに加えて、全員が歌えるという彼らの強さ。何層にも重なった声と楽器を味わいながら、会場は夕方の海辺のような緩やかで爽やかな空気が漂っていった。
今回特に印象深かったのは、自由にステージ上で楽しんでいる家主メンバーの姿だった。特に谷江俊岳（Vo&Gt）は誰よりも揺れたり跳ねたりしながらステージに立っていて、楽しそうな彼のノリがホールのお客さん全体に伝わっていったほどだ。自由に振る舞う彼らのおかげで、私たちもまた自由にその空間を楽しむことができる。時折お客さんからも声があがったり、それをメンバーが拾ってMCが広がっていったり、その日しか見ることができない貴重なライヴは、彼らの魅力であると感じた。
大きな空間で大きな音をいっぱいに浴びることができるのがフェスの醍醐味。大きい音って気持ちがよい！ と心地よい演奏に体を揺らしていると、「悲しいもので気づけば最後の曲です」と田中が口にする。さっき始まったばかりのような気がするのに。本当に楽しい時間は一瞬で過ぎ去っていくんだなと改めて実感させられ、少し寂しくなってしまった。けれども最後の最後まで惜しみなく自由に大きな音を鳴らし続けてくれるのが家主である。最後に「オープンカー」を演奏した彼らを目に耳に焼き付けるのは、心から気持ちのよいことであった。
私たちをピュアな気持ちにさせてくれる家主。今日感じたこの気持ちを大事にとっておきたい。
