DENIMS

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

DENIMS、彼らの真骨頂はこれからも加速する!

「DENIMSですよろしくー!」
「DAME NA OTONA」から始まったボロフェスタ2022のDENIMSのステージ。会場にはすでに後ろまでびっしりお客さんが入っており、注目度の高さがうかがえる。

「歌ってる間だけ虜にさせてくれないか」という歌詞にもあるように、まさに1曲目から会場を虜にしている。個人的に、DENIMSには近所のお兄さん的な雰囲気を感じるのだが、軽やかに演奏しているように見える中にメンバーの演奏スキルの高さが随所に光っている。職人芸のように安定したリズムを淡々と刻み続けるエヤママサシ(Dr)のドラムに、低音ラインを支える土井徳人(Ba)のベース。そして、メロディックに時にダイナミックに奏でる岡本悠亮(Gt)のギター。楽器隊の安定感が、釜中健伍(Vo&Gt)の温度のあるような声の中にある透明感、どこか安心できるような歌声と交わり、楽曲に厚みを持たせているのだろう。

そして、特徴的な入りへの繋ぎ方のライヴ・アレンジが楽しみのひとつでもある「ひかり」、思わず体がのってしまうような「fools」と続く。彼ら自身もつねに全身でリズムを刻みながら演奏しているのだが、周りを見渡すと、見事にみな思い思いに体を揺らしており、彼らの今の音楽を楽しんでいることがわかる。これぞDENIMSマジックだ。

岡本は、今年のナノボロ出演時に「DENIMSは多幸感が凄い! “多幸感先輩”だ!」と土龍に言われた、というエピソードを披露。自分たちでも気づかなかった部分に気付かせてもらったという。自他ともに認める多幸感先輩としての立ち位置をボロフェスタでは確立しつつあるが、この出来事をきっかけに、これからのDENIMSの活動は“悲壮感後輩”のためにいい音楽を作っていこうという方針になったそうで、会場からは笑いも起こる。

そんな彼らが次に演奏したのは、BiSHやPEDROで活躍するアユニ・DをDENIMS初のゲスト・ヴォーカルとして迎え、先月10月にデジタル限定配信シングルとしてリリースしたばかりの「ふたり」。牧歌的かつ印象に残るイントロとともにバスドラの音が響く。12月からスタートする全国ワンマンツアーでは、「ゴトウチ・D」という企画で、アユニ・パートを歌ってくれる人を老若男女不問で探していると話していた。「さて今日のアユニ・Dパートの掛け合いは!?」と思っていると、バンドを支える屋台骨の位置から、エヤマの伸びやかな高音パートが聴こえてきた。エヤマの秘めたる熱い想いとメンバーが時折ニヤニヤしながら楽しそうに演奏する様子を肌で感じつつ、こうしたヴァージョンを観ることができるのもライヴならではだと思えた。「平行線をたまには交わり離れたり」と何気ない日常で感じていることがカントリー風の心地よいアレンジで曲に詰め込まれている。

そして、これまでのハッピーな雰囲気から切り替わり、ギターのカッティングとスピード感溢れる「INCREDIBLE」。そして「Goodbye Boredom」と続く。まるで1本の映画のように様々な表情を魅せつつ、クライマックスにかけてあがっていく様が、ライヴならではの空気感を醸し出していた。やがて佳境に向かっていき、最後の1曲は「そばにいてほしい」。「単純な歌を貴方に届けよう そばにいてほしい」と時にストレートな歌詞も彼らの魅力であり真骨頂だと思った。

新たな試みによって新境地を開拓したようなライヴだったが、全国ツアーを経てどうなるのか? 多幸感先輩としてさらに磨きがかかるのか? 加速するDENIMSからまだまだ目が離せない。

Photo by 瀬藤育
Text by キムラアカネ