Hakubi

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

集まった小さな光といっしょに

今年のボロフェスタの唯一の平日でありアイドルグループの出演が最も多い日だ。そのこともあり、仕事終わりそのまま飛び出してきたような格好のお客さんから、仕事着から着替えたのか、推しアイドルのTシャツを着たお客さんでKBSホールはいっぱいだ。

ORANGE SIDE STAGEのトップバッターは、2017年結成、2021年9月に1stアルバム『era』で、メジャーデビューした京都発スリーピースバンド・Hakubi。
片桐(Vo&Gt)はMCにて、「(ボロフェスタ)4日間のうち、唯一の平日に集まってくれたみんなは、音楽好きやなと思います」と語った。

「楽しみにしてるアーティストがいるでしょう、今日はじめて出会って、これから楽しみになってくれたらいいなって思います、絶対覚えさせます。」と2曲目「辿る」の途中に片桐(Vo&Gt)の鋭い言葉が入る。

「辿る」は「忘れるんじゃないかって 消えてしまうんじゃないかって」というサビが印象的な曲だ。
その記憶の儚さの曲で入ったこの片桐の言葉が、耳に焼き付く。

何度も京都のライブハウスに出ているであろうし、今年8月には自身主催で〈京都藝劇 2022〉も開催したHakubiだが、何度も京都の名を、Hakubiの名を呼ぶ片桐。

華やかな光の中の私たちのクリスマスソングだという「32等星の夜」。
もしも、今日このフェスの雰囲気に溶け込めなくても、クリスマスの華やかさに耐えられなくても、この曲が耳に触れたらきっとだいじょうぶだと思った。

4曲目に披露した「在る日々」。
同じような日々を通り過ぎるだけの私たちに、「生きているそれだけで許してくれませんか」という祈りが、バンドサウンドで大きく響いた。

朝日放送テレビのドラマ『青春シンデレラ』主題歌の「君が言うようにこの世界は」も披露。
片桐の言葉に合わせてスマホのライトで満たされるホール内。
忘れない、忘れられるわけない光の中、幕を閉じた。

Hakubiが奏でる音の光は、またお客さんの日常の糧となって、これからも京都の狭い路地に行きわたるだろう。

Photo by 羽場功太郎
Text by 小池迪代