ナードマグネット

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

彼らの存在証明たるステージ

ボロフェスタ2022初日。 GREEN SIDE STAGEのトップバッターはナードマグネットだ。期待感が高まるばかりのフロアに対し、「僕びわ湖くんとコラボしたことあるんですよ」と開口一番につぶやく、須田亮太(Vo&Gt)。これは12:45からどすこいSTAGEで始まるびわ湖くんのこと。“滋賀県民の同士の戦い”だと話し、会場の笑いを誘った。

そんなゆるく温かい雰囲気から始まったライヴだったが、「アップサイドダウン」が演奏され始めると雰囲気は一変。秀村拓哉(Dr)が刻むキャッチーなビートに合わせ、藤井亮輔(Gt)が縦に飛び跳ねジャンプしていたり、さえこ(Ba)も楽器だけでなく体全身でリズムを刻んでいく。続く「(Let Me Be) Your Song」でも、目をあわせながら楽しそうに演奏するメンバーの様子にあわせ、観客も思い思いに体を揺らし、拳を突き上げる。3曲目の「アナザーラウンド」は、須田とさえことの掛け合いが印象的で、須田は「最高の人生にしようぜ」と歌いあげた。

続いて「全部だいなし!」。「わかってるから結局全部だいなしなんだよ」と自分を認めてくれるような曲に続き、次の「イマジナリーフレンド」では「君が一人ぼっちの夜は思い出しておくれ」と自分の味方になってくれているような気持ちになる。ナードマグネットは、たまに寂しくなる夜や、ついフッと糸が切れかけてしまった、そんな時に聴きたいバンドだ。いつでも1人じゃないと思わせてくれる、寄り添ってくれる楽曲を届けてくれるバンドだと感じた。

「いつもはちっちゃいライヴハウスで活動しているけれど、頑張っていればこんな場所で演奏できる、ご褒美みたいな日に出会える」と話す須田。「京都にも街のライヴハウスがたくさんあるが、そのライヴシーンに混ぜてもらえていることを光栄に思うし、ボロフェスタは街のライヴハウスとの日常との地続き感があるフェスだと思っている」と語り、まさにボロフェスタを体現しているMCに感動を覚えた。ライヴハウスの空気感そのままに、これから4日間続く京都の秋のお祭り。お気に入りの音楽はもちろん、新しい音楽にも出会えるきっかけとなるだろう。

「今日はあなただけの音楽を見つけてください。その中のお気に入りのひとつになりたい!」と叫び、最後に演奏された曲は「YOUR NEW FAVORITE BAND」。グッドでキャッチーなリリックだけではない、ロック・バンドたる所以を示している曲だった。今日初めてナードマグネットに出会った人もいるだろう。まさにそのきっかけとなり得たボロフェスタと、こうした楽曲をダイレクトに示し届けてくれるバンドの奇跡に、拍手したい気持ちになる。そんな存在証明のようなライヴだった。

Photo by ウチダミサキ
Text by キムラアカネ