ULTRA CUB

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

ボロフェスタのロック・ヒーロー、ULTRA CUB

4日間にわたって開催されているボロフェスタ2022も早いものでついに最終日。オープニングが終わり、今日も音楽への期待が高まっている。ORANGE SIDE STAGE、本日最初のアクトはULTRA CUBだ。しっかりとボロフェスタ2022オフィシャル白ロンTを着ているカーミタカアキ(Vo&Gt)が「ボロフェスタ最終日、俺らから始まります!」と高らかに宣言。ボロフェスタには欠かせない存在で、これぞ日本語ロック! とも言えるULTRA CUB。今日はどんな本気ライヴを見せてくれるのか? と思っていると、「別の世界」からライヴはスタート。ゆったりめの曲だからこそ、泥臭いくらいに真っ直ぐ、愛について歌い上げる彼らは今日も健在だ。

「夜煌船」そして「EVERYTHING」へと入る。スポットライトは彼らだけを照らしており、ロックに派手な演出は何もいらないのかもしれない、純粋にそう思わせてくれる。1本のギターとベース、そしてスティックを持ってステージに立ち、自分たちの音を鳴らす。自分たちの音楽を貪欲に、ときに無骨に、そんな対峙の仕方をするバンドマンはやはり最高に格好いい。清水佑(Ba/Cho)はベースを高く掲げ、上村孝太(Gt/Cho)は笑顔を弾けさせながら楽しそうにギターをかき鳴らす。そして、ギターとベース、マイクから音を届ける3人を後ろから支える稲毛僚也(Dr/Cho)もひたむきにドラムを叩き続ける。

ULTRA CUBは今年でボロフェスタ5回目の出演となり、メンバーは5年間、ボロフェスタのスタッフもしていることを話す。「舞台にあるウルトラマンを作ったり、バンドのブッキングをしたり、マジの手作りのフェスです」とカーミは話す。今日までの3日間、カーミも警備としてスタッフ業務を行っており、「KBSホールに部外者を立ち入らせるまいと、ほとんどの部外者を排除した」と話すと、会場からは笑いも起こる。バンドマンも当事者として参加するからこそ生まれる特別な感情や想いもあるだろう。そんな場所を今後もずっと守っていきたい、と感じた。カーミは「この1ヶ月、どういうライヴにしたいか? ってずっと考えていたけど、いつも通りやるだけじゃそっち(観客)に届かない気がして。だからこのステージ、今まで出会った人たち全ての力を借りてボロフェスタへの想いを勝手に背負わせてもらって、その上であなたへ届けようと思う」と決意を述べ、会場の熱気はさらに高まる。

残すはアガるしかないという3曲となり、「愛を呼ぶ愛してる愛を叫んでるケモノ」。「どうか幸せになれー!」と叫び全身全霊で音を鳴らす彼らを観て、気づいたら拳を突き上げ一緒に歌っている自分がいた。清水や上村、稲毛もみな全力で叫んでいる。何だこの一体感は、とパワーがみなぎってくるのを感じる。音楽で世界を救うことはできないかもしれないけれど、音楽から力をもらうことはできると信じたい。続く「絶対」では、3人が前に乗り出しながら、「絶対諦めないよ!」とヒートアップし魂を削りながら伝えてくれる。そう、私たちはひとりじゃないのだ。カーミはギターを置きマイク1本、壇上で叫び、ウルトラマンの櫓の手すりの上に乗りながら「八月のアリア」を演奏し、締めた。最後はバンドマンらしくギターを持ってステージ上に倒れ込んだ。その姿はウルトラマンのようなヒーロー、まさにロック・ヒーローだった。

Photo by リン
Text by キムラアカネ