奇妙礼太郎-solo-

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

心も体も距離が縮まった、奇妙礼太郎の2度目のステージ

ほんの数時間前、ORANGE SIDE STAGEにバンドセットで登場した奇妙礼太郎が、今後はどすこいステージに登場! 先ほどのステージを見ればソロも見たくなるのは間違いなく、ボロフェスタ2022のどすこいステージに入場規制がかかった。

人の間を縫うようにして登場した奇妙礼太郎を、熱冷めやらぬ観客が大きな拍手で出迎えた。「さっきバンドでステージに立って、満足したから好きな歌でも歌おうと思って」の言葉の通り、時折腕時計を見ながら与えられた時間の中で即興的に音楽が続いていく。その中には「赤いスイートピー」や「オー・シャンゼリゼ」など、誰もが聞いたことのある名曲でありながら彼の定番曲がどんどん、“どんどん!”続いていく。観客と対話をするように、言葉を投げかけながら緩やかに奏でられていく良質なメロディが日曜日の夕暮れ時にぴったりだった。

特に心動かされたのは、ふと思いついたかのようにはじまった「幸せなら手をたたこう」だった。
幸せなら手をたたこう、
幸せなら足踏みしよう、
幸せなら肩叩こう、
幸せならウインクしよう、
と遊びに誘われれば、手を叩く音、地面を踏む音、肩を叩く音がロビーを満たす。(観客が一斉にウインクする景色は奇妙礼太郎本人しか見れなかったのが惜しい)。子どもの時に聞いた思い出はあるが、大人になってから自分がこの曲で手を叩いた記憶はない。「あぁ……きっと今のわたし、幸せだ……!」とリアルタイムで“幸せ”を実感してしまい、なんだか泣きそうになった。

この幸福すぎる贅沢な時間は、奇妙礼太郎とロビーに集う私たち全員で作り上げたものだった。
大切な思い出がまた増えた。

Photo by ウチダミサキ
Text by 奥野ひかり