LOSTAGE

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

日常にあるべき場所に立ち続けるLOSTAGE

ボロフェスタ2023の初日トリを飾るのはLOSTAGEだ。
シンプルイズベストな出で立ちでリハーサルを終え、
鼓動が岩城智和のドラムに支配されたところで、1曲目の「巡礼者たち」を深々と届ける。

「平凡」では、五味拓人(Gt&Cho)の攻撃的なギターが染み渡り、血液と一緒に体内に音楽が流れる感覚を覚える。

五味岳久(Vo&Ba)による「僕らのようなロックバンドにできることは多くないですから。いつものようにキャパ80くらいのライヴハウスと同じようにやります、よろしく」という一言とともに「窓」が鳴り響く。
五味(Vo&Ba)がボロフェスタ主宰で〈livehouse nano〉の店長でもあるMC土龍に視線を送った気がする。

LOSTAGEは現在、47都道府県ツアーの真っ只中だ。
ツアー期間似合わせて、podcast番組〈LOSTAGE五味岳久のライブハウス巡礼ラジヲ〉を放送しており、土龍をゲストに迎えた第12回では、9月2日に行われた〈livehouse nano〉でのワンマンの話からボロフェスタへの思いを語り合っていた。

土龍がオーナーをしている〈livehouse nano〉こそ、キャパシティ80人ほどのライヴハウスである。
だから「窓」直前の発言は、LOSTAGEのライブハウス愛に満ち溢れたものである。

たちまちオーディエンスは両手を掲げ、フロアは拳でいっぱいになった。

日常を、踏みしめるドラムに抱きしめるやわらかなギターとベースが特徴的な「瞬きをする間に」に聴き入っていると、曲のクライマックスでステンドグラスが開く。
観客の純粋な「すごっ」という声があちこちから聴こえる。
ステンドグラスの光に照らされ、LOSTAGEが持つ大きな魂の輪郭が顕になる。

そのままの空気で迎えられたアンコールの「手紙」では、いつにも増してどんな宛先にも届きそうだ。

私は、なぜだかはじめてライヴハウスに行った時のことを思い出した。
暗くて、心臓の鼓動が爆音にコントロールされて怖かったあの日…でもなぜか恐怖以上に、幸せな気持ちがいっぱいでお腹も空かなかったはじめての経験。
ライヴハウスによく行くようになってから、怖さを1ミリも感じずに楽しめる人も世の中にはたくさんいると知り、そうでない自分を悔やんだ。
とにかくライヴハウスという場所は、人間の感情が乱れ咲いている場なのだ。
その花が枯れないように土を整えているライヴハウスの管理人やスタッフ、水を与えてくれるアーティストがいる。
今回のLOSTAGEはライヴハウスへの賛美歌だった。
改めて、ライヴハウスが日常になければならないと強く思い、これからもそんな日常が続くようにと強く祈った。

Text by 小池迪代

Photo by shohnophoto