yonige

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

彼女たちの現在を示すステージ

yonigeがボロフェスタに帰ってきた。
「デウス・エクス・マキナ」で牛丸ありさ(Vo&Gt)が声を発すると、一瞬にしてKBSホールに彼女たちの世界感が広がる。そして、ごっきん(Ba&Cho)のゆったりしつつも正確に刻まれたベースラインと鋭い眼光の先の洗練された動き。今年、10周年イヤーを迎えたyonige。変化を重ねながらもライヴ・ハウスで着実に実力を積み上げてきた歴史を感じる。

「yonigeですよろしくー」とつぶやき、「リボルバー」「顔で虫が死ぬ」「2月の水槽」と、『HOUSE』の収録曲を順番を入れ替えて演奏。キャッチーなサビにのせて展開される「顔で虫が死ぬ」で、余韻なくスパッと終わる感じも最高にロックだ。「行きつけだったコンビニ」や「環七は騒音のパレード」という日常表現のワード・センスも彼女たちの魅力だと思う。演奏中何度も、力強くリズムを刻みながらも、お互い真剣な表情で顔を見合わせる場面が印象的だった。ステージ上で言葉や笑顔を交わすのではなく、伝えたい音で繋がっている。ロック・バンドを10年以上続けてきた彼女たちの間にある、確かな信頼関係が垣間見える場面だった。

ボロフェスタは7年ぶりで、インディーズで3人でやってた頃ぶりだというMCを挟み、改めて感謝の言葉を発する牛丸。
〈ボロフェスタ2023〉は「対岸の彼女」、「最愛の恋人たち」でライヴを締めた。「愛されたかったわたしは あなたを愛しているふりをした」と叫び、ニヤリと笑いながらギターをかき鳴らす。「ごめんね」とは歌わなくなったこの曲。今の曲も昔の曲も、形を変えながら、彼女たち自身が大切に歌い続けている。終始凛としてステージに立ち、音が鳴り止まぬうちに、深々とお辞儀をして颯爽とステージを去る彼女たちの姿は、今日も最高にロック・バンドだった。これからも、変わったり変わらなかったりしながら、ずっと歌い続けていてほしい。未来のyonigeも楽しみで仕方がない。

Text by キムラアカネ

Photo by 横矢和佳