ナノボロフェスタ2020
ナノボロフェスタ2020

Text by マツノミズホ
Photo by やまだのどか

湧、その圧倒的な才能に
言葉を失った

 

ナノボロフェスタ2020も佳境に入ってきた。どすこいステージラストの長谷川健一にバトンを繋ぐのは、真っ赤なワンピースを身に纏ったミステリアスな少女、湧。
Marie Louiseのボーカル・ギターとしても活動する彼女のソロ・ステージ。アナログシンセサイザーとギターを駆使したローファイ・サウンド。圧倒的な才能に思わず息をのんだ。

ステージ上には湧、ひとり。「初めまして、湧です。新世界一緒につくりましょう」と、「exodus」が始まった。驚くことに、すでに1曲目から泣きそうなほど感動していた。彼女の奏でる音、歌声、存在、すべてがきれいでこの世のものとは思えない。
曲が終わると、会場から言葉を失ったように「おぉ」という声が多くこぼれ出ていた。

2曲目、自粛期間中に製作された「Kiss You First」では、R&Bを思わせるノリの曲を英語で歌い上げる。音源よりも圧倒的に表現力が豊かで、大人びた表情を見せる彼女にドキッとした。

最近購入したというフライングVを持つと、夏が一番嫌いなのに、夏の曲が多いと笑い、「回想旅行」をリズミカルに歌う。ギターとシンセサイザーを同時に使いこなす姿は、圧巻だ。その姿に惚れ、またしても泣きそうになる。
さらに、「湧の夏のキラーチューン!」と一声、始まったのは疾走感のあるバンド曲「サマータイトル618」。今度は、少女らしく駆け出したくなる夏を、全身で叫びながら、ギターをかき鳴らす!

ここまで幅広いテイストの曲をすべて魅力的にしてしまうのは、才能としか言いようがない。曲を披露するごとにそれはより確信に変わっていった。
「対面で(ライヴが)できてうれしいです。最後1曲やって終わります。湧でした」と挨拶をし、「都心の窓から」を披露。心地の良い曲調からエモーショナルなギター・ソロを弾きこなした。

ああ、終わってしまった。観客もあっという間のできごとのようで驚いている様子だった。終始、湧の存在と流れゆく時間に心酔していた。
すべての曲の情景がリアルに伝わってくる。もっと湧のつくり出す世界をみていたい。
今日、湧に出会えたことを感謝するように、大きな拍手が送られた。