また笑顔で会えるように
リハーサルからノリノリなお客さんで埋め尽くされていくどすこいステージ。
誰のリハなのかと覗いてみるとNaNoMoRaLのリハだ。
昨年はヒダカトオル(Gt)、春尾ヨシダ(Ba)、RONJI(Dr)というバンド編成でボロフェスタを盛り上げていた光景が記憶に新しい。
リハから既に梶原パセリちゃんがギターをかき鳴らしているため、やる気満々なことをイジる雨宮未來。想定外にリハが順調で、急遽、梶原がギターのみで弾ける曲として、「春になる」と「087478」をしっとりと歌い上げた。
ボロフェスタ初出演のきっかけを作った舞台監督スタッフがはじまりのアナウンスをNaNoMoRaLの2人から任された。
ブッキングからスタッフで行うボロフェスタだからこそできる、人と人、音楽と人との繋がりを密に感じる。
「こんばんは、NaNoMoRaLです!」と雨宮の引き締まった声が響く。
そうか……もう“こんばんは”なのかと日が傾き始めたことに気づかされた。
先程のリハのゆるふわ感から一転、1曲目の「サーチライト」がはじまると、観客は全力コールでNaNoMoRaLに応える。
「モノクロマジック」では、雨宮に花丸をつけてもらいたい大人たちが先程よりもコールを強く強くしていく。
雨宮と梶原は、そんな人々に「生きててくれてありがとう」とすらりとした指で花丸をつけてくれた。
時折、雨宮の持つ有線マイクのコードが衣装とマッチし、『千と千尋の神隠し』に出てきそうな姿になり、雨宮のあどけなさをあらわにする。
ライヴの締めはやっぱり「唖然呆然」だ。
「またボロフェスタに出られるように今日から1年間頑張ろうね」と梶原に微笑みかける雨宮。
「唖然呆然」はただ盛り上がるだけでなく、深く頷きたくなる曲だ。
「どうせ二度目などない 幸せで死にそうだ」(”唖然呆然”の歌詞より)というような荒廃した歌詞なのに、鳴り響いているファンファーレのようなメロディ。
これは現代の生活そのものだ。
われわれはみな、形骸化したタスクの中、四つ葉のクローバーを見つけ出そうと必死だ。
だから、「唖然呆然」では生活を噛みしめるように頷きたくなるのだろう。
NaNoMoRaLのステージが終わると、完全に日は落ちていた。
日が落ち切っても、NaNoMoRaLとお客さんは良い笑顔だ。
そんなNaNoMoRaLとそのお客さんの笑顔の糧になる幸せが続きますように。
Text by 小池迪代
Photo by 瀬藤育