兄弟ならでは、2人の呼吸の仕方
残念ながら出演キャンセルとなってしまったDYGLの時間に急遽出演が決まったのは、京都は宇治の出身の兄弟2人組、キセル。出演が一昨日決まったことに少し驚きを見せつつも、久しぶりのボロフェスタ出演を楽しみにしてきました、とふたりは話す。「DYGL感がないのが心苦しいけど」と笑いを誘いながら、すぐに会場をキセル色に染めていった。お腹いっぱいにご飯を食べた後の心地よい午後のような、心地よい横揺れが全体に広がっていく。
ふたりが奏でるハーモニーは、これまで共に時間を過ごしてきた兄弟ならではだなと感じさせてくれる。お互いを知り尽くしているからこその呼吸のタイミングが、ふたりのじゅわっと広がる声をひとつにして、私たちにゆっくりと注いでくれる。絶妙な揺らぎさえも完璧に揃っていて、目と目を合わせるだけで分かり合える関係性が、それはそれは本当に美しかった。彼らのステージを眺めるお客さんたちはみな、キセルの音楽にひたひたになって、優しい音楽を堪能している様子だった。
20年前にキセルが初めてライヴをした場所も、このKBSホールだという。「この感じ覚えてるわ」と話す彼らは、今年の4月に発売されたEP『寝言の時間』からタイトル・トラックにもなっている「寝言の時間」を安心感たっぷりに披露してくれた。
ゆりかごみたいなこの浮遊感の中、眠りにつけたらどんなに幸せだろうか。いつまでもこの時間が続いていけばよいのにな、なんて考えたり、最後の1音まで大事に大事に胸にしまっておこうと思ったり。なんて贅沢な時間を過ごすことができたのだろう。明日からもなんか頑張れるかも、と思わせてくれた彼らの呼吸に心から感謝したい。
Photo by shohnophoto
Text by 風希