鈴木実貴子ズ

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

最終目標、正々堂々、死亡

昨年は新型コロナウイルスの影響で出演キャンセルになり、ついに今年ボロフェスタ初登場となった鈴木実貴子ズ。
「名古屋から来ました。普段は2ピースバンドで、鈴木実貴子とズで鈴木実貴子ズをやっています。普段からズの扱いが良くなくて」と、いさみ(Dr)は客を笑わせた。

バンド編成ならではの轟音アンサンブル。鈴木実貴子(Vo&Gt)の歌声は、その轟音にまったく負けない凄みのあるボーカルだった。

2曲目には「生きてしぬ」を演奏し、鈴木はマイクにかじりついて歌う。
首に、腕に血管が浮かび上がっているのが見える。
壮絶に歌い上げる鈴木の歌声が街の底STAGEから地上に届いたのか、いつの間にかボロフェスタ2023で初のライヴ入場規制が出る。

「都心環状線」では妬みや弱さを洗いざらい歌詞のなかに吐き、ぐるぐるとした感情があることを認めて歌う。
「正々堂々、死亡」では、曲が始まる前に鈴木が言っていた、「自信のない不確定なままでもやっていかなくては。自分の人生だから」という言葉が印象的だった。
観客は拳を固く握りしめ、ステージに向かって突き上げる。

鈴木実貴子が歌うように、最終目標を正々堂々死亡にできたらと思う。
お天道様に後ろめたいことなく、自分がやりたいことをやりきって、各々の寿命を最期まで使い切って死んでいけたら。
戦争がなぜダメかって、正々堂々、死亡じゃないからだって鈴木実貴子なら言うのではないだろうか。
鈴木は「関心を持つこと、命を燃やすこと」と観客に投げかけ、力の限り歌う。 

色んなアーティストの曲を聴いていくと、歌に救われました、明日からも頑張れますという、流行りの曲についたyoutubeのコメントが薄っぺらく感じるときがあるが、鈴木実貴子の曲には、歌声には、歌詞には本当にがんばって生きていこうと思わせてくれる力がある。
バンド全員が命を燃やしながらの演奏をし、街の底STAGEを終えた。

Photo by リン

Text by 松下愛